オレは上手く笑えなくて。
頷くことも、できなくて。
震えるその小さな手さえ、握り返してやることができなかった。
『ゆいは弱くて臆病だから、たくさんのことを信じられないの…でもお兄ちゃんのことだけは、信じられる。だからお兄ちゃん、ゆいにも分けて、…信じられる、勇気が欲しい…ゆいのところにも、明日はちゃんと、くるんだって…お兄ちゃん、ゆい…こわいよ…』
オレを信じて叫ぶ声さえ、すがるように搾り出すように泣く声さえ、儚く脆くベッドに深く沈んでいく。
ゆいは静かに残酷に、深い眠りへと落ちていく。
──ゆい。でもオレには、無いんだ。分けてやれるような勇気も、ゆいを安心させられる明日を連れてくる力も。オレにはそんなもの、無いんだよ。
勇気も、希望も、明日でさえも。
そんなものオレははじめから持って無かったんだ。