先を走っていたライオンがぴたりと止まり、後ろについていたうらら達も肩で息をしながら足を止める。
ライオンの視線を追うと、おそらくつり橋だったものの残骸であるロープと、それに絡まる木の板が風に虚しく揺れていた。


『…どうして…』


ライオンが力なく呟く。
肩で息をしながら皆その光景に状況を理解した。

逃げ道を、失ったのだ。

目の前には崖が、後ろからは、2頭のカリバが唸り声を上げながら距離を縮めている。


──もしも。もしもこの世界で命を落としたら、どうなるんだろう。


考えるだけで背筋が凍った。
その時だった。

「ここから先には残念だけど、行かせてあげられないわ」


突然、頭上から降ってきた声に、視線が一集する。


「あー、やっと会えた! ホントはこんな所まで来る前に会いたかったんだけど、手こずっちゃって。アイツの目を、魔法を潜り抜けるのがもう、大変だったんだから!」


そこには場違いなほどに明るい声で、くるくると表情を変えながら笑う女の子が居た。

空飛ぶ箒に腰掛けた、とんがり帽子を被った女の子。
少し露出の多い黒い服に長いブーツ、そして黒いマント。
脳裏に過る単語があった。


「ふふ、ご察しの通り、アタシは魔女。しかも東のわるーい、ね」