「…な、に…? 今の…」


緊張が静寂に変わり、皆歩みを止めあたりを見回す。
木々のざわめきが不安を煽るように頬をかすめ、森全体が騒いでいるようだった。


『──カリバだ…』

「…カリバ?」


『おそろしい獣だよ、ボクなんかよりもだんぜん。まさか、こんなタイミングで…この先は崖だ、急いで向こう側に渡った方がいい』


ライオンが急かすように先を促し、ライオンの声が聞こえないみんなに状況が良くないことを伝え急いで森から抜けた。

暗い森から明るい場所に急に出た所為でその眩しさに一瞬目を細め、次に視界が落ち着いた時。

すぐ目の前に2頭のおそろしい獣の姿があった。


「……!」


それは皆の目にも平等に映っていたようで、一様に動きを止め息を呑む。

目の前の獣は、トラの頭と上半身で腹から下はクマのような下半身だった。
歪んだ口元から覗く大きな牙に鋭く長い爪。
どこか血走った、凶暴そうな眼。

ライオンの言っていた通り、向こう側には岩肌が覗き地面が大きく裂けていた。
その崖を背に、2頭のカリバはこちらを睨みながら、唸り声を発し続けている。

うらら達に明らかな敵意を向けて。


「ちょっと急展開過ぎだろ…」


レオが苦笑いを漏らし、ソラが顔を強張らせたままうららをかばうように前に立つ。


『あっちにつり橋があったはず、はやくこっちへ…!』


いつになく荒い口調のライオンに、うららとレオは素早くそれを口にしながらライオンの後を追った。

黄色い道から外れてしまったけれど、それどころではなかった。