『…う、うらら…こわがらせたら、ごめんね…。確かにレオの、言う通りかもしれない…ボク達は君に会いたくて、繋がりを、希望を手繰り寄せる…そしてボクはレオと出逢い…君と会えた』

「…わたし、と…?」


『うらら、だから君も…この先たとえ、どんな困難があっても。ボ、ボク達が居ることを、どうか忘れないで』


目の前に現れたライオンは本物にとても近い風貌だった。
だけどやけに表情が豊かに思えるのは、その口元が言葉を発する度に器用に動いているからかもしれない。

映画やアニメの世界のような不思議な錯覚。
ライオンは今まで出逢った絵本の住人の中で一番おそろしく、だけど一番やさしい声音だった。


『うらら…君は決して、ひとりではないよ…』


その言葉を、以前もどかこかで聞いた気がする。
誰かに言われた気がする。

だけどすぐには、思い出せなくて。
うららはただ黙って呑み込むことしかできなかった。

やがてライオンがそっと歩み寄る。


『こ、今夜はボクが見張ってるよ。だから安心して、皆休むといい。この森に危険なものはいないよ』


そう言ったライオンはうららから時折視線を外しながらも、それでもその瞳にうららをしっかり映して。
どこか不器用に、笑ったように見えた。