「よし、行くか」
踏ん張っていないと体が倒れそうなほどの強風。
シャワーのような大雨が、その強風によって様々な場所へと打ち付けられている。
もし本当に松野が屋外にいるのなら、非常に危険だ。
大きな荷物を持っているから風にあおられやすい。
よろけて歩道から車道へ出てしまい、たまたま通りかかった車に……なんて縁起でもないイメージが湧いて、焦りが増す。
そういう危険があるのも確かだ。
早く探し出さないと。
そう思うのに、風に足を取られ、雨に視界を遮られ、上手く歩けない。
雨がっぱのフードがベチベチと顔に当たって痛い。
ビヨォォォォォ……
なにか恐ろしい生物のうなり声のような音が、頻繁に聞こえる。
雨と一緒に木の葉っぱも降ってくる。
ピカッと空に稲妻が走り、数秒後、空間を破壊するような落雷の音が響く。
松野が危ない。
早く見つけなくちゃ。
私は歯を食い縛り風に堪えながら足を進めた。
晴れた日は男子たちがサッカーをやっていたグラウンドには見当たらない。
遊具などが納められた倉庫を開けてみても、道具がきちんと収められているだけで、誰もいない。
宿舎の周りを一周ぐるっと巡ってみたが、周辺に雨風をしのげるような場所はなかったし、当然彼女もいなかった。



