彼女が国語部屋にいる間、私も掃除などをしながら、できるだけ部屋の中にいた。
質問に答えたり当たり障りのない話をしていたが、私の冗談に笑ってくれると安心した。
松野は6時半ごろ国語部屋を出て、生徒のお風呂タイムの後、7時直前に食堂にやって来た。
「いただきます!」
全体的にはいつもと変わらない雰囲気で食事が始まる。
しかし、松野は一人だ。
いつも一緒に食べていた二人は、離れた席で笑っている。
二人とも、それでいいの?
二人だって、きっと内心では松野を一人にしていることに罪悪感を覚えているはず。
松野に対する怒りが、今でもまだそれを凌駕しているということか。
松野は夕食をさっさと食べ終えて、そそくさと食堂を出ていく。
あの二人より早く部屋へ戻り、道具を持って、彼女らが戻る前に教室へと行くつもりなのだろう。
「松野、飯島と何があったんだろ……」
それに対して二人は松野に何を言って、松野は何と言い返したのだろう。
関係を修復するのは難しいのだろうか。
私の呟きに、隣に座っていた俊輔が反応する。
「飯島はいつも通りだぞ?」
「そうなの? 松野と何かあったと思ってたんだけど」
飯島はダメージを受けていないのなら、一方的に松野にひどいことを言ったということだろうか。
「ていうか松野もいつも通りじゃん」
「はぁ?」
あれが、いつも通り?
松野の様子の変化、男にはわからないの?
だから飯島もいつも通りなの?
「気にしすぎじゃね?」
「……あんたが鈍感なのよ」
ムッとしてそう返すが、俊輔はさして気にしていない様子で首をかしげた。
「そうかなぁ」
……もう俊輔の感覚なんてアテにしない。



