田中先生直伝の怪談話を聞いて食欲をなくした俊輔を放置して、私は颯爽と食器の返却口へと歩いた。

ドッキリの仕返しだ。

大雨のせいで食堂はいつもより暗いが、いつもよりずっと賑やかだ。

いや、賑やかというよりむしろうるさい。

昨日までは外で汗を流して遊んでいた男子たちが食堂で騒いでいるからだ。

食堂全体の人口密度が高いため、湿度も気温もいつも以上。

ごみごみしていて松野や重森を探すのが難しい。

いや、難しいっていうか、見つからない。

ん? いない。

友達とケンカすると、ランチは特にしんどいだろうから、部屋に戻ったのかも。

国語部屋に遊びに来ていた二人以外、特に仲のよさそうな子もいなかったし、一人で食べたのだろうか。

合宿はまだあと三日ある。

早く仲直りしてくれればいいけど……。



午後の勉強タイムが始まる時刻。

松野は普通に国語部屋に現れた。

涼しい顔で課題の続きに手をかける。

……が、時たま聞こえるため息が重い。

重森も心配そうに彼女をチラチラ見るから、全然課題が進まなかった。