「じゃ、最後の二人。頑張って」
俊輔から懐中電灯を受け取り、私と重森も肝試しスタート。
木々に囲まれた一本道へ足を踏み入れると、辺りは真っ暗になった。
懐中電灯で照らされている部分以外はほぼ何も見えず、空を見上げればそびえ立つ木々の梢の隙間から、かすかに星空が見える程度だ。
月明かりさえ届かない。
まるで異世界へ繋がる獣道のよう。
ザク ザク ザク……
サワサワサワ……
自分たちの足音と、風に揺れる木々の音。
懐中電灯はどこに当たっても不気味だった。
「重森。ちゃんと前に当ててよ。道が見えない」
「あー、ごめんごめん」
ザク ザク ザク……
サワサワサワ……
木々の中にいるからか、空気は澄んでいて涼しい。
だけどその涼しさがより一層不気味さを醸し出している。
「ねえ、先生」
重森が神妙な声を出す。
目が慣れてきたけど、少し距離があるため表情まではハッキリ見えない。
「何? 怖いの? 手でも繋いであげようか?」
冗談めかして彼の方へ寄る。
しかし重森は真面目なトーンで返してきた。
「違うよ」



