完全に二人の足音が聞こえなくなったあたりから、並んでいる生徒たちの声も静かになった。
山道は木で覆われていて一切明かりがないらしい。
一本道は入り口から数メートルですぐにカーブするため、ここからは先が見えない。
頼りない懐中電灯のみで歩くのは確かに怖そうだ。
「はい、次の二人、どうぞ~」
各ペアは1分おきくらいに出発していく。
私たちの順番も徐々に近づいていった。
「重森、あんた口数少ないけどビビッてんの?」
私がそう言うと、重森はこちらを見もせずに声を荒げる。
「は? ビビッてねえし。先生こそ怖いんだろ?」
私はここぞとばかりに、再び両頬に手を添えた。
「こ~わ~い~」
そんな私を冷たく一瞥した重森は、呆れたように告げる。
「大丈夫そうだな」
「チッ……」
あー憎たらしい。
でも、楽しいかも。
重森だって口数が減っているし、あの真っ暗な道の先が見えないから、どこかで怖いという意識ははたらいているはずだ。
彼が私をどうエスコートしてくれるか、楽しみである。
順番待ちも退屈になってきた頃。
“キャー……!”
道の奥の方で微かに、でも確かに誰かの叫び声が聞こえた。
まだ出発していない生徒たちがザワザワしだす。
俊輔はニヤリと笑って、あえて明るく送り出す。
「はい、次の二人。どうぞ~」
送られた二人はオドオドしながら山道へと姿を消していった。
ただの一本道で悲鳴って……。
もしかして、何か出るのかな?
小動物くらいならいいんだけど、それ以外のものなら困る。



