俊輔の合図で、会場となる山道の入り口へと移動する。
田中先生と南先生はすでに山小屋へ移動しているのか、この場にはいない。
田中先生とは、いまだに挨拶程度で、まともに話をしていない。
いつも無表情で淡々と仕事をこなしていて、こちらからは近づきにくい。
冷たい感じがするけど生徒にはまあまあ慕われているみたいだし、どんな人なのかよくわからない。
「くじの番号順に並んでー」
俊輔の号令で、まばらだった生徒たちが順番に整列してゆく。
くじの順にコースへ進むらしい。
私と重森は最後尾に並んだ。
「よろしく。何かあったら守ってよね」
挑発するように重森に言うと、重森はへへっと笑った。
「何かあったら俺一人で逃げるし。つーか先生こういうの怖くなさそう」
……相変わらず可愛くないやつめ。
「やっだぁー。こ~わ~い~」
両手を両頬に当て、思いっきりブリッコしてやった。
「はっ! キモッ」
「なんだと!」
そう言って口を歪ませる重森に、軽くチョップをおみまいする。
そうやってじゃれていると、私たちの様子を後ろで見ていた小谷先生の笑い声が聞こえた。
「一番の二人、どうぞいってらっしゃーい」
男子生徒に懐中電灯が手渡され、男女二人で歩いていくトップバッター。
砂利道特有の足場の悪そうなザクザク音がだんだん小さくなっていく。



