学び人夏週間


「余った一人は大サービス! あの佐々木先生が一緒に回ってくれまーす!」

「えっ?」

何それ?

どういうこと?

生徒たちの視線が一気に私に注がれる。

「わ、私そんなの聞いてません!」

驚く私に、俊輔がニヤリと笑って言った。

「はい。言ってませんもん」

肝試しの間、のんびり他の雑務を片付けようと思っていたのに、まさかプレイヤーとして参加させられるなんて。

肝試しについて何も任されなかったのは、このためだったのか。

生徒たちの笑いの渦に包まれながら、私は妙な緊張を感じはじめた。

肝試しなんて小学生ぶり。

私、今でも怖がりだったらどうしよう。

俊輔め。

帰ったら覚えてろ!

「それじゃあペアを組んでくぞー。まずは1番のくじを引いた人、挙手!」

「はーい」

「はい……」

順番にペアが発表されてゆく。

生徒たちは各々照れくさそうに会釈したり、笑ったり、残念がったりしている。

松野は飯島とはペアになれなかったようだ。

高3の男子と会釈し合っていた。

そして、私とペアになった残念な男子生徒は。

「というわけで、最後の一人は中3の重森でーす! おめでとう! 佐々木先生とペアだ」

大きな拍手と冷やかしの歓声があがる。

「別にめでたくねーし!」

思いっきり不満そうな顔を私に見せた重森は、チラリと私を見て不満そうに顔をしかめた。

目当ての女子でもいたのだろうか。

「これからこの懐中電灯一つだけで、目的地の山小屋まで行ってもらいます。コースは一本道だから大丈夫。どんなに方向音痴でも迷わない。山小屋に南先生と田中先生がいるから、指示に従ってください」