「どうしたの? わからないなら質問においで」
優しく呼びかけると、二人は再び課題の方へと目を戻した。
あまりやる気は見られないが、勉強する気がないわけでもないらしい。
せっかく合宿に来ているのだ。
私の仕事は、彼らにちゃんと勉強させること。
質問がないからといってボーッと座っているだけでいいだなんて、思っていない。
私は立ち上がり、二人の課題の出来を確認することにした。
まず、松野。
苦手なものから片付けるつもりなのか、現代文の課題を広げている。
漢字と語句、読解問題がワンセットになっているが、漢字と記号問題だけ解答欄が埋まっている。
抜き出しやその他の記述問題は手を付ける気すらないようだ。
これではいけない。
「ここの問題、すごく簡単だよ。もう一度ちゃんと考えてみて」
そうアドバイスをすると、彼女は軽くため息をついてペンを握った。
何? そのため息。超感じ悪いんだけど。
でも我慢、我慢……。
まだ初日なんだから。
彼女が再びペンを動かしたのに安心して、隣の重森の方へ移った。
彼も苦手なものから片付けるつもりなのか、国語の課題を開いている。
しかしこの少年、解答欄すべてが白紙だ。
「全然解いてないじゃん。どうしたの? 難しい?」
いやいや、さっき少し読んだけど、そんなはずはない。
私の言葉に、重森もまた軽くため息をついてペンを握った。
何なのこいつら。
さっきから、すごく嫌な感じ。
「めんどくさい」
という気持ちを全身で表現している。
大学入学以来ずっと塾講師の仕事をやっているが、こんなあからさまにナメきった態度を取られたのは初めてだ。
みなみ塾って、本当に生徒を指導できているの?
こんな雰囲気で、俊輔はやっていけてるの?
しばらくするとまたペンの音がやみ、部屋が静まりセミの鳴き声だけがビリビリと耳を刺激する。
自主的に問題を解く意思は感じられない。
当然質問に来ることもしない。
こいつら本当に、何しにこの合宿に来たわけ?



