「課題はもらってるよね? わかんないところがあったら、何でも聞いてね」

言いながら講師用の席に座った。

二人から返事はない。

パイプ椅子がグラグラしている。

座り心地が悪くて余計にストレスを感じる。

我慢、我慢。

椅子なんて、後で予備のものに交換すればいいだけよ。

部屋は四畳半くらいの広さで、長机が二つ置いてある。

私が座っている講師用の席と、彼らが座っている生徒用の席だ。

席はいつでも増やせるよう、予備の長机とパイプ椅子が部屋の後ろの方に準備されている。

「重森君と、松野さんだよね」

「はい」

「いくつ?」

「俺中3、15歳」

重森は生意気というよりは反抗期真っ盛り、という感じの話し方だ。

「高1です。私も15歳」

松野は辛うじて敬語ではあるが、口を利くのは面倒だという態度が全面に出ている。

やる気がないんだったら塾の合宿なんて参加しなければいいのに。

お金を出してくれた親に対する感謝の気持ちや期待に応える気持ちはないのだろうか。

二人は共に15才。

学年は違うが年は同じである。

大人……といってもまだ二十歳だが、この年になると1~2歳の差なんて全然気にならない。

しかしこの年頃の子達にしてみれば、その1学年が非常に大きな壁だったりする。

中学生と高校生ということもあって、この二人は同じ15歳だけれど、重森は明らかに子供で、松野の方がずっと大人びている。

「じゃ、さっそく課題を始めようか」

私はそう促して、二人を観察し始めた。