我ながら、極端なことを言ってしまった。

だけど、本当のことだと思う。

重森はなんだかんだと反発してくると思っていたのに、意外と納得している様子。

いつの間にやら松野も課題から目を離し、私の方を向いて話を聞いていた。

私は話を続ける。

「読書感想文って人が書いた文を理解して、自分の意見を書くものでしょ?」

「うん」

「自分がいいと思ったこと、好きだと思ったこと、嫌だと思ったこと、嫌いだと思ったこと。人は誰かと関わりながら生きていくんだし、そういうのを上手に伝えられるようにならないとね」

「あー、確かにね」

そう言って大人しくなった重森。

3回ペンを回して、真面目に課題を始めた。

どうやら私の説明に満足してくれたらしい。

……助かった。

「でも、本ってあんまり面白くないですよね」

ぼそっと松野が言う。

「読んでて疲れるっていうか……。読む気になれないんですけど」

「あー、俺も」

満足してくれたはずの重森まで賛同する。

松野の言う通り、活字は読んでいて疲れることもある。

特に絵で感覚的に捉えられるマンガなんかより、頭を使わないと読むことができない。

でも。

「それってたぶん、自分にとって面白い本に出会ってないだけだよ」

私は自分のバッグを漁り、一冊の本を取り出した。

古本屋で100円で購入した、薄めの文庫本。

古い小説だ。

それを松野に手渡した。