「どうして本なんて読まなきゃいけないの? 超ダルい」

どうしてって……ダルいって。

そんなに本を読むのが苦痛なのだろうか。

私は小学生の頃から本を読むのが好きだったし、考えたこともなかった。

答えてあげたいが、なかなか気の利いた答えを思いつかない。

「私は楽しみで読んでるけど、学校でわざわざ読ませるのは、言葉の勉強のため、かな」

ありきたりだけど、読むことによって学力が上がるのは本当だと思う。

テストの点という意味でも、読み「慣れる」ことで有利になる。

普段の生活では使わない書き言葉独特の表現もあるし、学校の授業だけではなかなか学べない表現だってたくさんある。

「言葉の勉強って言うけどさ。毎日日本語話してるじゃん。なんで国語の勉強なんてするの?」

難しい質問だ。

文句ばかり垂れる重森に、松野が迷惑そうな顔をしている。

いっそのことまたサクっとメスを入れてほしいところだが、何も言わずに課題をやっている。

重森の質問から逃げれないことを悟り、頭をフル回転させる。

どうして国語、つまり日本語の勉強をするのか。

私なりに答えを紡ぎだす。

「言葉ってさ、正しく読んだり話したりしてるつもりでも、案外間違ってるんだよ。できるだけ正しく読み書きすることで、誤解とか勘違いを減らせるでしょう? それに、普段は簡単な日本語を使って生活してるけど、大事な書類ほど難しい言葉で書かれているし、それを理解できるくらいの国語力がないと、将来生きていけなくなっちゃうよ」

「えー、大袈裟じゃね?」

「そんなことない。ちゃんと勉強しとかないと、悪い人に騙されたりするんだから」