完全にアウェーのこの塾で、唯一気兼ねなく話せる俊輔は、ありがたい存在だ。

小谷先生とは風呂で少しだけ仲良くなったけれど、先輩だし忙しそう。

メガネの田中先生は、まだどんな人かもわからない。

「市川先生、ちょっといいですか?」

「あ、小谷先生。どうしました?」

市川先生……か。

コロッと講師の顔へと戻った俊輔。

いつものヘラヘラした俊輔より、少しカッコよく見える。

彼のカッコいい姿を、この塾の人たちは日常的に見ているのか……。

かたや私ときたら、『イケてない』と言われてしまった。

幻滅されて振られてしまうかもしれないと、少し焦る。



夏合宿初日。

疲労と悔しさ、そして少しの焦りを抱き、残りの6日間への決意を新たにした。