松野と違い、二人はまさに女子高生という感じのキャピキャピしたノリで話す。
この勢いに圧倒されるが、みなみ塾にはこういう明るい生徒もいるのだと、密かに安心した。
松野は二人の様子を呆れたような顔で見る。
やっぱり冷めているというか、可愛いげがない。
だけどこの二人もそんな松野に構うのが好きなようだし、松野もそういうキャラとしてちゃんとコミュニケーションを取れているようだ。
「化粧水何使ってるんですか?」
「シャンプー何使ってるんですか?」
私には勉強とは全く関係ない質問が飛んでくるが、悪い気はしないし、女子高生たるもの、そうあるべきだと思う。
私だって高校生の頃は、年上の女性にいろいろ教えてもらいたかった。
松野もこれくらい笑顔で話してくれれば可愛げがあるものを……。
「ねえさやか、佐々木先生にも聞いてみようよ」
一人が松野に何かを提案をする。
松野はギクッと顔をひきつらせた。
「やめてよ……」
「なんでー? いいじゃん」
「そうだよー聞いてみようよー」
彼女たちの間には何か大きな疑問のテーマがあるらしい。
美容? ファッション? 恋愛?
この年頃の関心はこれらに集中している。
松野は「わかった」とため息混じりに言って、心底嫌そうな顔で言った。
「佐々木先生……読書感想文の書き方のコツを教えてください」
すかさず「違うでしょー!」とツッコむ二人。
三人はその後もキャーキャー言い合って、結局本来尋ねられるであろう質問は来なかった。
女子高生特有のはしゃぎっぷりを見て「若いなぁ」と感じてしまう。
まだまだ大人のヒヨッコだと思っていたが、私もちゃんと大人になっているみたい。