小谷先生は自信満々に続ける。
「でもね、私思うんだ。このみなみ塾で経験を積めば、絶対いい教師になれるって」
「私も、そう思います」
勉強するために自らの意思で通う塾とは違って、学校には嫌々通っている子もいる。
講師とは違って、教師の仕事は学習の範囲を大きく越えて指導力が必要だ。
「ここなら生徒とどう向き合えばいいか、たくさんヒントを掴めると思うよ。一緒に頑張ろうね」
「はい。よろしくお願いします」
私は今まで、いわゆる「良い子」としか接してこなかった。
授業は真剣に聞いてくれるし、課題を出せばちゃんと取り組んでくれる。
それが当たり前だと思っていた。
そして、そんな生徒たちを指導できている自分はまあまあ優秀なのではないかと勘違いしていた。
教務内容のレベルが教師としてのレベルではない。
私はまだまだ未熟だ。
今日、初めてそれを理解した。
一緒に頑張ろうと言ってくれた小谷先生。
彼女の笑顔を見て、私は自信過剰で視野の狭い自分を反省した。
そして俊輔に大きく遅れをとっているような気がして、悔しくなった。
風呂から出て簡単にスキンケアや身支度を済ませ、勉強部屋のフロアに戻る。
国語部屋に入ると、松野と他の女子生徒が二人いた。
花も恥らう女子高生が三人。
「あ、佐々木先生ですよね?」
「すっぴんだぁ」



