一泊二日の短い旅だけど、存分に楽しんで帰りたい。
部屋の露天風呂がすごくよくて、ふたりで無駄に何度も入った。
いい旅館にめぐり会えた運命に感謝する。
海の近いこの温泉街は海鮮料理が安くて美味しい。
夕飯に選んだ店もよかったからか、つい食べ過ぎてしまった。
お腹が落ち着いてから、歩いて夜の砂浜へ出掛けた。
ふかふかの砂はすぐにサンダルの中に入ってくる。
私たちはいっそのことサンダルを脱ぐことにして、まだ熱の残る砂を素足で踏みしめ、しばらく互いに砂を投げ合ってはしゃいだ。
お互いに忙しかったのもあって、恋人同士らしく過ごしたのは久々だ。
疲れたところで防波堤の段差のところに腰を下ろした。
ザザー ザザー……
私たちが黙ると、波の音と時たま通る自動車の音しか聞こえない。
黒い海に白波が映えている。
空には星も見えて、穏やかで静かだ。
「いいね、夜の海」
私がしんみり呟くと、俊輔は靴を履かずに波の方へと走っていった。
彼が踏み出して舞った砂が私にかかる。



