「俺さ、なんつーか、アレなんだ」

「アレ?」

「ほら、あの、女で言えば幼児体型?」

顔を赤くして必死に直接的な表現を避けようとする重森。

やっぱり、繊細で自意識過剰な年頃の彼には、何か成長的コンプレックスがあるらしい。

声変わりはしているけれど、髪はサラサラで肌はツルツル、体つきもまだ細い。

髭も生えてなさそうだし、この分なら他の部位の体毛も薄そうだ。

幼児体型というのも、わかる気がする。

かわいいやつめ。

「クスッ」

我慢できずに少し笑ってしまった。

重森は顔を余計に赤くして拗ねる。

「気持ちは理解した。でも汗臭いままでいいの?」

「……わかってるし」

重森は今日一番の嫌な顔を見せたが、私はそれがおかしくて仕方ない。

なーんだ。

初対面で露骨にやる気のなさを表情に出すから、すごく嫌な奴なのだと思っていたけれど。

あれは大人ぶりたい中学生の虚勢だったのか。

「しげちーん、風呂行こうぜー」

まだ私の知らない少年がこの国語部屋に入ってきた。

重森の友人だろう。

中学生のようだが、なるほど重森よりは大人寄りの体格である。

「あー、うん」

重森は何も気にしていない素振りを見せて、そのまま友人と行ってしまった。

15歳。

大人と子供の真ん中だとか言われるけれど、大人からすればまだまだ子供に見える。

体の成長度合いは人それぞれだが、大人と目線が揃うことで、自分は同等の人間なのだと主張したくなる。

子供扱いするな。

俺の考えを尊重しろ。

そんな気持ちが大人への反発心になる。

教えてもらえなかった大人の秘密を知れば知るほど人格的にも大人になっていると勘違いできた。

私にも覚えがある。

あと5年経ったら、彼らも今の自分を未熟で恥ずかしいと感じたりするのだろう。