感傷に浸る私を見た俊輔が、口角を上げる。
「そんな佐々木先生に、プレゼントがあるのですよ。ね、小谷先生」
何かを企んでいるようなわざとらしい口調だ。
小谷先生も私たちの方を向いて訳知り顔で不適に笑む。
「そう。とっておきのプレゼントがね」
小谷先生は自身の膝にのせていたバッグから封筒をふたつ取り出した。
飾り気のない、茶封筒だ。
小谷先生はそれらをいったん俊輔に手渡し、私が彼から受けとる。
ふたつとも宛名のところには『佐々木先生へ』と手書きで書かれており、下の方には合宿場の施設名と住所、電話番号が印字されている。
「色気もそっけもない封筒でごめんね。急遽合宿場の事務の人にもらったからさ」
小谷先生がそう言って笑う。
「中身は手紙だよ。開けてみて」
俊輔に促され、のりしろを折っただけで封はされていない封筒のひとつから、中に入っている手紙を取り出した。
誰からの手紙かなんて、聞かなくたってわかる。
宛名の字を見れば、一目瞭然だ。
この一週間、私は彼らの字を読み続けてきた。
「読んであげて。あいつら、手紙なんて嫌がると思ったけど、結構進んで真剣に書いてたよ」
私はドキドキしながら先に取り出した方の手紙を広げた。



