車に荷物を詰め、各々ここへ来た時と同じ席へ乗り込んだ。
帰りの運転も、車の所有者である田中先生にお願いする。
助手席には小谷先生。
助手席の後ろに俊輔。
そして運転席の後ろに私。
「それじゃあ、出発しますよ」
田中先生の言葉に、全員が応える。
「はーい」
それを合図にリアブレーキ解除が解除され、ギアが入り、車は滑らかに走り始める。
門を出ると、合宿場はあっという間に見えなくなってしまった。
車は曲がりくねった山道を、慎重に下りてゆく。
田中先生は元ヤンだと聞いたが、快適な安全運転である。
私たちを気遣い、できるだけ車がブレないようにスピードと曲がり方を調整してくれている。
「寂しい?」
俊輔が左隣から私の顔を覗き込む。
私はちょっと重くなっている口角を上げた。
「ちょっとね。一週間もあそこにいたんだもん」
「そうだな」
「松野と重森にだって、滅多に会うこともなくなるし」
滅多にというより、もしかしたらもう二度と会うことはないかもしれない。



