荷物の準備となると男子のほうが早いようで、私と小谷先生が広場に出ると、すでに男子生徒のほとんどが集まっていた。
女子生徒はまだ半分程度しか集まっていない。
もう午後5時になろうという時間だが、夏の夕方はまだ日が高い。
「暑いー」
「早く涼しいバスに乗りてーよー」
「女子まだかよー」
男子たちがブーブー文句を垂れているのを、俊輔が「お前らそんなこと言ってるとモテねーぞ」などとからかって笑わせている。
そうしている間に女子も集まってきて、最後に松野たち3人が来たことで全員が揃う。
持て余すほど大きな荷物をバスの収納スペースに収め、順にバスへ乗り込んでいく。
広場には徐々に人がいなくなり、生徒たちと南先生の荷物すべてが収まったところで運転手さんが扉を閉める。
「それでは、お願いします」
小谷先生が運転手さんに微笑む。
運転手さんも、「かしこまりました。安全運転で参ります」と言ってバスに乗り込んだ。
数秒後、プシューという音とともにゆっくりとドアが閉まり、ゆっくりとバスが走り出す。
俊輔、小谷先生、田中先生、そして私は、手を振りながら、そのバスを見送る。
私の目は、無意識に松野と重森を探していた。
真ん中あたりに、重森を見つけた。
目が合ったが、手は振り返してくれなかった。
松野は後ろの方におり、友達二人と一緒に笑顔で手を振り返してくれた。



