講堂へ入ると、小谷先生がこれから帰宅するまでのことを説明していた。
生徒たちは自宅に帰れるのが嬉しいのか、ホッとしたような顔で話を聞いている。
「それではこれからいったん部屋に戻って、荷物を持って、広場に集合してください。5時にはバスが出ますからねー」
「はーい」
小谷先生の合図で、生徒たちは慌ただしく部屋へ戻っていく。
私たち講師は講堂に忘れ物がないかを確認し、自分達の部屋に戻る。
広場にはもう彼らが乗るバスが到着していた。
「終わるなぁ、合宿」
俊輔が小さく呟く。
「終わっちゃうね。過ぎてみるとあっという間だったな」
「だな」
そう言って、笑い合う。
私と俊輔も、ここを出れば同僚ではなく、恋人同士に戻れるのだ。
「なあ、彩子。今日帰ったらさ……」
「なに?」
「あー、いや。やっぱ後にする」
俊輔がそう言って、背後を気にするので、釣られて私も後ろを見る。
小谷先生と田中先生がなんとも言えない不気味な笑みを浮かべ私たちの様子を見ているのに気づき、私と俊輔は慌てて距離をとった。



