「そうですか」
南先生は優しい笑みを浮かべ、手に持っていた紙コップをテーブルに置いた。
「あ、なんだかすみません。頼りないことばっかり言ってしまって」
思い返して恥ずかしくなる。
だけど本当に、自分の甘さや無力さを思い知るばかりで、講師として十分に勤め上げたという自信はないのだ。
そんな私に、南先生は穏やかな声で言ってくれた。
「とんでもない。あなたの働きは素晴らしかったと思いますよ」
「本当、ですか?」
「もちろん。あのふたりが初日に無愛想だったのは、人見知りです。特に重森なんかは反抗期真っ只中で、自分の気持ちを表に出すことを極端に恥ずかしがります。そんな彼らに、あなたはかなりの速さで溶け込んでいった。私はまずそこに驚きました」
嬉しいが、照れくさい。
仕事で褒められることには慣れていないのだ。
「あ、ありがとう、ございます」
「数日前にも言いましたが、あなたはしっかりと学んでいらっしゃる」
南先生の言葉が胸に沁みる。
「あなたのような人材を手放すのは、塾長として非常に惜しいです」
目頭が熱くなり、私は込み上げてきたものを目から溢れさせてしまった。



