昼食を終え、午後の勉強タイムが始まった。
与えられる課題も、今取り組んでいるものが最後になる。
ペンを走らせる音や松野と重森の息づかいが教室に響く。
私が担当している今日の午前中までの課題チェックが完了した。
私の合宿での仕事はもう、ほとんど終わったことになる。
「先生、終わりました」
松野が立ち上がり、仕上がった課題を私へと提出する。
普段は愛想のない松野が、達成感の笑みをこぼしている。
「早かったね。お疲れさま」
私が受け取ると、両手を上げて体を伸ばし、「やったぁ…」と控えめに喜びを表現した。
それを見た重森がちょっと焦ったように残りページを確認する。
松野ほど効率よく学習を進められない重森は、仕上げるまでにもうしばらくかかりそうだ。
この一週間、松野と一緒の空間にいるためにこの部屋を選んだ彼を見ていてわかったが、重森が本当に苦手な科目は英語であると思われる。
国語も得意というわけではなさそうだが、今後は受験に向けて、正直に申告して勉強してもらいたい。
「残りの時間で学校の宿題、やっていいですよね?」
「どうぞ」
彼女が学校の教材を広げる。
時刻は刻一刻と、合宿終了の瞬間へと向かっていた。



