合宿最後の昼休みがやってきた。

この食堂でいただくごはんは美味しい。

ランチは毎日メインおかずが一品変わるくらいでワンパターンだったけれど、行きつけのお店で日替わりランチを食べているような感じで悪くなかった。

昨日騒ぎを起こした飯島は、昨日と同じ席で友達と談笑している。

松野が負った傷や彼女を思って戦った重森の嫉妬など、まったくなんの問題でもなかったようにヘラヘラ笑っている。

松野の男の趣味にとやかく言うつもりはないのだが、飯島は見た目がそこそこ爽やかで男臭くないから、女子中高生にはモテるのだろう。

しかしどうやら、それがたたってあまり女子の気持ちを大切にできるタイプではないようだ。

彼の言動については女性として腹立たしい気持ちもあるが、今後の成長に期待したい。

そんな飯島を、松野はまだ少し気にしている様子だ。

そしてそんな松野を、重盛がすごく気にしている。



みなみ塾のみんなとは、あと数時間の付き合いだ。

今日が終わった瞬間から、私と彼らはまったくの他人になる。

寂しさと虚しさが胸にこみ上げて、複雑に渦巻いていく。

人は新しい環境に順応する代わりに、過去の環境を忘れてしまう生き物だ。

私はあっという間に忘れられてしまうと思うけれど、どうか松野と重盛だけは、いつまでも覚えていてくれますように。