煤を入れたビニール袋は酒類を買った時にもらったと思われる。

煤と砂と思い出の塊とでも表現してみようか。

風が吹くとガザガザと耳障りな音を立てて存在を主張し、太陽の光を浴びて熱を帯びてゆく。

袋の口を縛る時、舞った砂埃の煤臭さに身体中の不快センサーが敏感になった。

暑さ、汗、セミの鳴き声、疲労。

これもあと少しで終わりだからと自分自身に言い聞かせ、体を動かす。

なんとか袋を塵取りに乗せ、指定されたゴミ捨て場へと歩いた。

コンクリートで舗装されたところは特に照り返しが強い。

こめかみの横から耳の前を通って顎の方へ、汗が流れるのがわかる。

早く屋内に戻りたくなって足を速めた。

たまに吹く風が心地いい。



「ただいま」

作業と着替えを終えて国語部屋に戻ると、松野と重森はなに食わぬ顔で課題を続けていた。

ふたりはチラッと私を一瞥し、邪魔をするなとばかりに目だけ合わせて再び課題へと視線を戻す。

あれ……?

なんか、感じ悪い。

まあまあ仲よくなって忘れていたけれど、このふたりはもともと感じの悪い子たちだった。

この一週間、共にたくさんの経験をして、なんだかとてもいい子になった気がしていたのだが。

私が彼らに慣れただけで、ふたりが変わったわけではなかったのか。