こんなことを言うと塾の講師失格かもしれないが、この合宿で二人の学力が伸びたかどうかは、正直わからない。

課題はきちんとやらせたし、できない部分は指導した。

彼らも私も、合宿でプログラムされていることはクリアしたのは確かだ。

しかし、私は彼らの成長を確かめることができない。

合宿の成果は翌週のテストで試されるらしいが、その頃私は別の塾で別の生徒の指導に当たっている予定だ。

私にできるのは、せいぜい俊輔から様子を聞くことくらいである。

しょせん私はただの臨時講師で、明日以降はおそらく、なにか特別な偶然でもない限り、彼らとは会うことすらないだろう。

二人はそのうち私のことなんて忘れてしまうのだろうか。

私にとっては一生忘れられないほど刺激的な一週間だったのだけど。

松野は彼氏ができたけど2日で別れたり、友達と喧嘩したり、台風の中脱走した。

重森だって、松野のためにやきもきしたり、心配したり、ケンカしたりした。

二人にとっても刺激的で濃い一週間だったはずだ。

だけど、たった一週間だ。

これから来るより刺激的な毎日に押し流されて、私と過ごした一週間など忘れてしまうのだろうか。

それが、無性に寂しく感じられる。