国語部屋に入る。

「おはよう、おふたりさん」

「おはようございまーす」

松野と重森も、他の生徒たちに比べればやや疲れた顔をしているように見える。

一昨日は脱走や台風があったし、昨日はあれだけ働いたのだ。

無理もない。

重森にいたっては頭だけを机の上に載せ、目と口を半開きにしている。

今にも眠ってしまいそうだ。

松野も眠いのをなんとか堪え、学校から出された宿題を進めている。

「ほらほら、元気ないよ。最後なんだから、もうちょっとやる気出して」

私が指摘すると、二人は無言で体勢を整えた。

「最終日の課題、始めようか」

私の声を合図に、鈍い動作でとりかかる。

まるで初日に戻ったかのようなやる気のなさだ。

あと数時間でこの合宿は終わってしまうのに。

彼らの最後のひと頑張りを期待していた私は、裏切られた気持ちになった。

初日に比べれば、彼らとの距離はずっと近づいたと。

たった1週間だけど、共に過ごし共に乗り越えた経験から、絆が育まれたと。

私は彼らに対し、そう思っていたのだけど。

彼らにとっては違ったのだろうか。