「なんでしょうか」

私は大袈裟にならない程度に、そのまま頭を下げた。

「たった7日間のこの合宿で、私は想像すらしたことのない経験をたくさんさせていただきました。忘れられない1週間になりました。本当に、お世話になりました」

述べ終えて、頭を上げる。

南先生も慌てたようにこちらに体を向け、正座した。

「こちらこそ、お世話になりました。力を貸してくれて、ありがとう」

そんなふうに言われると、恐縮した気持ちになる。

この6日間、私は働いたという感覚があまりない。

「そんな……、とんでもない。私はこの場にいただけみたいな感じですし」

自分の未熟さに気づき、焦り、生徒を指導するどころか振り回された。

しかしそのおかげで、私は少し強くなった。

学ばせてもらったという意識のほうが、強いのだ。

「いいえ。佐々木先生は十二分に務めてくださってますよ。明日までもう一日、よろしくお願いしますね」

明日は最終日。

南先生とも、小谷先生とも、田中先生とも。

そして重森と松野とも、明日でお別れになる。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

最後まで学ぼう、この塾で。

明日もきっと忘れられない1日になる。