酒には弱いし、酔うと変な話ばかりするし、二人で飲むと外でもイチャイチャしたがるし。
呆れることもあるけど、大好きな私の彼氏。
小谷先生は面白くなさそうな顔を私に向けると、田中先生に絡み始めた。
「ねー田中先生。この二人、ヒドいんですよ。付き合っていること内緒にしてたの」
そう言って私と俊輔を何度も指差す。
田中先生は無表情のままあっさり告げた。
「僕は知っていましたよ」
それを聞いて、私は口に入れたビールを吹き出しそうになった。
なぜ田中先生まで知っているのだろう。
もしかしたら、南先生もご存知なのかもしれない。
「えー知らないの私だけ? もーやんなっちゃう」
小谷先生はますます頬を膨らませる。
「田中先生は、どうして私たちのこと……」
念のため、小声で尋ねる。
すると彼は眼鏡で隠した形のいい目をやさしく細め、私と同じ声のトーンで答えた。
「市川先生に聞きました」
私たちの関係は内緒にしておこうと言い出したのは俊輔だったはず。
もちろんあえて公言するつもりは毛頭なかったから承諾した。
それなのに、言い出しっぺが先に約束を破ってるなんて。
恨めしい視線を俊輔へ向ける。
彼は変わらずだらしない表情で南先生となにかを話している。
無意識にため息がこぼれた。
「黙っていようって、約束していたんですけどね」
田中先生はクスッと小さく笑いを漏らす。