私たち三人が南先生の部屋に入ると、俊輔はすでに出来上がっていた。
顔を真っ赤にして、南先生にだらしない笑顔を向けている。
昨日のカッコよかった姿との差がスゴい。
「先にいただいてますよ。ささ、座ってください」
南先生に促され、各々適当な位置に腰を下ろす。
ちゃぶ台にはつまみもいくらか準備されていた。
「お疲れ様でーす」
缶ビールで乾杯。
さっきは生徒に隠れて飲んだから、できなかった。
鍛練の場である合宿所で酒なんて飲んでいいのだろうか。
そう考えると、さっきとは違う背徳感でまた酒が美味しく感じた。
「でー、俺はね、教えてあげたんですよ。ポンパドールはフランスの無駄遣い女の名前だって」
酔っている俊輔はなんだかよくわからない話をしている。
「へー、そうなんですか。知らなかった」
南先生は親切にもそんな俊輔の相手をしてくれている。
情けなくて、申し訳ない。
「はぁ……」
呆れてため息をつくと、私の様子に気づいた小谷先生が怪しげな笑みを向けてきた。
「そんな彼が好きなんでしょ?」
私にしか聞こえないくらいの小声だったけれど、私はどきりと肩を震わせた。
「あんな顔を見ると、わかんなくなります」
乾杯からすでに1本飲み終えている彼女は、酔ってきたのか拗ねたように唇を尖らせた。
「なにそれー? だったらあたしにちょうだいよー」
「それはできませんけど」



