「なんか……ほんとにすみません」

私が謝っても仕方がないのだけど、他にどうしていいかわからない。

小谷先生は私が気負わないように、自分から笑って笑って、一生懸命笑い話にしてくれる。

「本当のところ、市川くんの彼女が佐々木先生じゃないかって、なんとなく思ってたんだ」

「どうしてですか?」

小谷先生は枕から顔を上げて、軽く上へ放り投げた。

きれいに真上へ上がったそれを、キャッチ。

「昨日、台風で道が塞がったってわかったとき、見たことないくらい必死な顔をしてたもん。ああ、きっと佐々木先生が好きなんだなって勘づいた」

昨日、松野や重森がいるにもかかわらず、私の名を呼び抱きしめてくれた彼の顔を思い出す。

私は彼に愛されている。

その事実は私に自信と勇気をくれる。

「来てくれたのが彼で、嬉しかったです。本当に」

照れながらそう言うと、小谷先生は茶化すように笑った。

そのまま勢いよく大の字に寝転ぶ。

「あー悔しい! でもスッキリ!」

男性が評するに“ツンツン系”の私に比べ、素直で快活で小柄な小谷先生は、断然モテるタイプの女性だ。

それでも私を選んでくれた彼を、私も大切にしよう。

そして、彼女のように魅力的な女性に負けないよう、自分を磨き続けよう。

私は密かにそう誓った。



ーーコンコン

「ビール余ってるんですけど、南先生の部屋で飲みませんか?」

ノック音のあとに聞こえた田中先生のお誘い。

私たちは二人同時に応える。

「飲みまーす!」