「付き合って二日ですよ。前代未聞でしょう?」
松野は明るい表情で自嘲する。
私は湯の沁みた粘膜の痛みに堪えつつ、やっぱりなと納得した。
小谷先生は唖然として松野に尋ねる。
「二日って……その短い間に何があったの」
口には出しにくい事情だ。
松野は少し表情を固くした。
「まぁ、端的に言えばケンカしたんですよ。私たちはまだ、お互いを思いやれるほど大人じゃありませんでした。加えて、恋人同士という関係に求めるものが違ったんです」
大人顔負けの分析に、私と小谷先生は顔を見合わせ感心した。
「二日でよくそこまでわかったね」
小谷先生のコメントに、松野はふふ、と軽く笑いを漏らす。
そして無邪気にこう尋ねた。
「そういえば小谷先生って、彼氏いるんですか?」
私の方が、ギクリと震えた。
その話題はマズい。
「私? あはは、聞かないでよー。残念ながらいないのよ。欲しいんだけどね」
笑って答える小谷先生。
「そうなんだ。生徒の誰かを好きになったりすることはないんですか?」
「生徒は生徒だし、そういう風に見えることはないな。ね、佐々木先生」
「はい。みんな子供ですし」
高校生なんかは年も近いけれど、この微妙な年齢差が大きい。
生徒で最年長は18歳の高校3年生だが、同じ2歳差でも、高校3年の生徒と大学4年の先輩とでは全然違う。



