脱衣所にて、油や煙を浴びた服を脱ぐ。

「自分の髪からも煙の臭いがする……」

松野が低い位置でツインテールにしていた髪の片方を鼻に近づけ、嗅ぎながらぼやく。

「そう? 私わかんないよ」

ショートヘアの小谷先生はそう言って首をかしげた。

私も髪を嗅いでみる。

アウトバストリートメントの香りに、肉や花火の残り香を感じる。

平たくいえば、臭い。

「私の髪も煙の臭いがします。早く洗いたい」

女3人でそんな会話をしていると、男湯の方の壁から小さくゴンと鈍い音が聞こえた。

慌ただしくドタドタと続く。

「お前ら、いい加減にしろ!」

俊輔の怒声がして、重森と飯島が何かを喚くのが聞こえた。

あの二人がまたケンカして暴れているらしい。

「あっちは賑やかですね」

「本当だね」

「あれだけ働いたあとなのに、元気ね」

私たちがあきれざまにそう呟いた直後。

「ぎゃあっ!」

悲鳴が聞こえたと思ったら、急に静かになった。

田中先生が制止したのだと、容易に推測できる。

私たちは軽く笑い合って浴室へ入った。