「よし! 後は男どもの仕事だね」
「はい」
テーブルと焼き網の台を残して、私たちの仕事は終了した。
テーブルを含む大きい道具は、男たちに任せる手はずになっている。
「私たちもグラウンドに行こう」
「はい」
小走りの小谷先生に私も続いた。
グラウンドではみんなで歌を歌って盛り上がっている。
伴奏は俊輔の奏でるフォークギターだ。
「市川先生って、ギターなんて弾けるんだ」
小谷先生が感心したように目を輝かせる。
私は彼がギターを弾くことを知っていたし、その姿がいつもよりカッコいいことも知っている。
彼を誇らしく思う気持ちと、これ以上好きにならないでほしい気持ちが交錯して、複雑な気持ちになった。
歌のあとは、焼きマシュマロだ。
「マシュマロ焼くぞー!」
南先生の声に生徒たちが歓声を上げる。
田中先生が一人ひとりに棒を挿した大きなマシュマロを配っていき、受け取った順にキャンプファイヤーで軽く炙っては「焦げちゃった!」とか「まだ硬い」などと言いながら楽しく食べる。
マシュマロを持った松野と飯島が、高1の群れから少し離れるのが見えた。
いよいよ話をするようだ。
あの二人はどうなるのだろう。
気になるが、盗み聞きをするわけにもいかない。



