学び人夏週間


一気に3分の1くらい喉に通した。

しばらく摂取していなかったアルコールが体に沁みる。

勢いよく一息つくと、田中先生がくすっと笑う。

「いい飲みっぷり」

そう言って軽く一口流し込む。

喉仏が大きく動く。

横顔もいいなぁ。

「ちょうど喉が乾いてて」

いくつかはわからないが、私や俊輔より何歳か年上であることだけは知っている。

まだまだ大人のヒヨッコである私たちには足りていない『大人の魅力』を感じてドキッとしてしまった。

……って、ダメダメ。

私には俊輔がいるんだから。

「佐々木先生。他塾の仕事もあるのに、うちの合宿に参加していただいてありがとうございます」

眼鏡の奥に秘めた瞳が私をとらえていると思うと、ちょっと緊張してしまう。

「いえいえ。今週は体が空いていたので」

「それでも、貴重な休暇を使っていただいてます」

「お、お役に立てて良かったです」

手持ち無沙汰にビールをどんどん飲む。

缶はあっという間に空になった。

もう一杯飲んでしまいたいが、内緒で飲んでいるため酔うわけにはいかない。

「佐々木先生は話がうまくて生徒の心が掴むのが上手いですね。向いてると思いますよ、先生」

ああ……ダメだ。

気づいてしまった。

この人はきっと、自分がいい男であることを隠して仕事してるんだ。