「佐々木先生、そっちの準備どう?」
呼ばれて声のする方を向く。
声の主である俊輔が、グラウンドからこちらへ戻ってきている。
彼と共にキャンプファイヤーの準備をしていたふたりも、彼の後からこちらへ向かっている。
作業を終えたようだ。
「このふたりのおかげで、もう終わりそうだよ」
私が視線を松野と重森に投げると、俊輔が彼らに向かって駆け出す。
「よーし、よくやった!」
重森の頭をワシワシと撫で回す俊輔。
「やめろ!」ともがく重森。
じゃれ合うふたりは講師と生徒というより兄弟にすら見える。
松野と飯島は互いに目を合わせるなりちょっと気まずそうな顔をして「お疲れ」と言い合っていた。
どうやらまだ話はできていないようだ。
小谷先生の指揮で、風呂上りの生徒たちがやって来た。
それぞれが所定のテーブルに着くと、途端に広場が賑やかになった。
各テーブルにひとつずつ設置された卓上バーベキューコンロに入れた炭に、田中先生が慣れたように火をつけていく。
ある程度火が回ったところで、田中先生の指示のもと、生徒が扇いで加熱する。
広場の温度が徐々に上がっていった。
「お待たせー! 肉だよー!」
小谷先生とおばちゃんたちが皿に盛った肉や野菜を持ってきてくれた。
生徒たちから歓声があがる。
待ちわびていた生徒たちは好き好きにそれを網に乗せて、バーベキューが始まる。
広場は香ばしい香りを含んだ煙とみんなの笑いに包まれていった。



