「お説教、どうだった?」
私が軽い感じで尋ねると、重森はこれまでの2時間を思い出したのか、うんざりした顔をこちらに向けた。
「心の生傷をえぐられたって感じ」
そう答え、服の上から胸のあたりを押さえる。
よっぽど精神的なダメージを受けたらしい。
「南先生に?」
「いや、田中先生」
松野も気にしているのか、自分の作業の手を止めて重森を見ている。
「何を言われたの?」
「思い出したくねーよ」
「心の生傷って何?」
「言えるわけないだろ……」
ーーガラガラガラ
ドアが開く音がして、私たち三人の視線がそちらへ。
重森の背筋がピンと伸びる。
やってきたのは田中先生だ。
メガネをかけていない彼の素顔の美しさに驚いたのか、松野が目を丸くして凝視する。
「佐々木先生。メガネを返してほしいのですが」
「あ、はい。どうぞ」
私は立ち上がり、さっき洗ったメガネを彼に差し出した。
似合わないこのメガネをかける前にと、私も彼の顔をじっと見つめる。
田中先生はそんな私など気にする素振りもなく、あっさりメガネをかけてしまった。



