やるべき仕事を終えると、わりと暇だ。
仕事はこれからどんどん増えていくから、体力を温存するつもりでいたが、それにしても暇だ。
ポカポカするし、このままでは眠くなってしまいそう。
席を立ち、後ろから二人を観察してみることにする。
松野がシャープペンシルで文字を書く音が心地よく響く。
勉強にはこの筆記音も大事で、これによって学習効率が上がるという説もある。
私はその音を邪魔しないよう、静かに教室の後ろへと移動した。
重森が消しゴムで文字を消し始めた。
ゴッゴッゴッゴと派手な音がして、机ごと揺れる。
力加減が下手なようだ。
松野はそれを迷惑そうな顔で見て、文字を書くのを一旦止めた。
重森が消しゴムを置くと、今度は二人分のペンの音がする。
重森も、ちゃんと真剣な顔ができるらしい。
ゴッゴッゴッゴ……。
また重森が机を揺らす。
迷惑そうな顔をしている松野は、堪えきれずに告げた。
「ちょっと、もう少し静かに消してよ」
彼女は見た目と違って結構短気なようだ。
顔を上げた重森は困った顔をして言い返す。
「静かに消してるよ」
強く出ないあたり、彼も自分の消し方が下手なことをわかっているらしい。
松野は軽くため息をついた。
「どこがよ。こっちは机が揺れて書けないの」
「仕方ないだろ」
「はいはい、そこまで」
私は二人を止め、積んである予備の長机を指差す。
「贅沢に一人一脚。狭くなるけど、それでいいっしょ?」
重森が立ち上がり自ら机をセットする。
さすがは男の子。
まだちんちくりんだが、意外と力強い。
松野は彼がやるのは当然、といった表情で、引き続き自分の課題に勤しんでいた。
この狭い部屋に長机が三脚。
ちょっと窮屈だが、ケンカされるよりもいい。



