視線は決して合わせずに荒れた息を整える。

重森のTシャツはグラウンドの砂にまみれている。

「ほら、行くぞ」

田中先生の鋭い声に、二人は無言で立ち上がる。

「重森。砂、はらえ」

重森は今だ燻る怒りをぶつけるように、強めに自分の体をはたいた。

腕や脚に少しだけ擦り傷があるようだ。

雨上がりの乾ききっていないグラウンドの砂は、はたいた程度では落としきれない。

重森の服は悲しく汚れてみすぼらしく、彼の無力さを周囲に知らしめているようだ。

「佐々木先生」

振り返る田中先生。

「はい」

「メガネ、お願いします」

「あ、はい……」

田中先生は二人を引き連れ建物の方へ。

グラウンドにはメガネがぽつりと残されている。

砂で少し汚れてはいるが、歪みはないし、傷もついていないようだ。

もしこれが折れるなりして壊れてしまえば、彼の魅力をもっと引き出せるメガネに買い替えられるのでは。

なんて考えが浮かんだが、余計なお世話だと思い直した。