6日目の朝がスタート。
昨日の疲れが抜けずにダルい体を叩き起こし、今日も講師としての自分を起動する。
嵐の中普段とは違う歩き方をしたからか、ふくらはぎが筋肉痛になっている。
あの程度で筋肉痛なんて我ながら情けない。
台風一過で朝からやる気満々の太陽のもと、ラジオ体操で程よくストレッチ。
張っている筋肉に血液を巡らせ、気合いを入れ直した。
松野たちはすっかり仲直りしている様子だし、今日は平和に一日が過ごせそうだ。
食堂で朝食をいただいていると、隣に俊輔が座った。
「おはよ」
と言った直後、大きな口を開けてあくびをする。
よく見ると目もいつもの半分くらいしか開いていない。
彼は彼とて疲れているようだ。
「おはよう。喉の奥まで見えるほどの立派なあくびですね」
「なんか昨日、あんまり眠れなくて」
「どうしたの?」
私が尋ねると、俊輔は私の顔を見ながらため息をついた。
なによ、失礼なやつ。
軽く睨むが彼は不満げな顔のまま私の顔を見つめる。
そしてとても小さい声で、私だけに聞こえるように言った。
「欲求不満。そろそろ限界」
「は……はぁっ?」
「帰ったら覚えとけよ」
俊輔はそう言って、もくもくと食事に集中した。
「おはよう」
国語部屋へ入ると、スッキリしたような面持ちの松野と相変わらずダルそうにしている重森がこちらを向く。
「おはようございまーす」
「はよっす」
ちゃんと二人が揃っていることに安心する。
合宿も残りあとわずか。
二人には昨日の分もしっかり学んでもらわなくては。
「先生、これ」
重森が何かを持ってきた。
私が貸した本と、松野にもらった原稿用紙だ。