何を言っているかまではわからなかったけれど、俊輔の声であることだけはわかった。
きっと私の声に気づいてくれたんだ!
「俊輔ーーー!」
叫んでみるが、様々な音が混じって、私の声こそ届いているかわからない。
ビニールに雨が打ち付ける音が邪魔で、頭部が濡れるのも厭わず雨がっぱのフードを下ろす。
そのタイミングでチェーンソーの音が止んだ。
「彩子ーーー!」
聞こえた! やっぱり俊輔だ!
「俊輔ーーー!」
「大丈夫ーーー?」
「大丈夫ーーー!」
木に隠れて顔は見えない。
枝や葉の少ない隙間から、チラチラ誰かが動いてるのがわかる程度だ。
「ここは俺たちにまかせてー、小屋に戻ってろーーー!」
「わかったー! 待ってるからねーーー!」
私が答えると、再びチェーンソーの音がし始めた。
試しにここまで下りてみてよかった。
俊輔の声が聞けた。
目と鼻の奥の方がつんと熱くなり、じわり目に涙が浮かぶ。
助けが来たのを確認できて安心した私は、フードをかぶり直し、幸せな気持ちで山小屋へと引き返した。



