「期待を裏切ってすみませんね」
拗ねるようにごろんと横たわる。
「別に期待してたわけじゃないですよ。市川先生、モテキャラじゃないから、面倒見のいい小谷先生くらいにしか相手にされないんじゃないかっていう感じで」
むむっ!
彼女としては聞き捨てならない。
俊輔は三枚目キャラだし、ちょっと頼りないし、たしかにモテるタイプの男じゃない。
でも、いざというときはちゃんと私を守ってくれるし、恋愛だって、なかなか素直になれない私を上手くリードしてくれている。
優しくて、誠実で、魅力ある男なのに……。
でもいいんだ。
俊輔の男としての魅力は、私だけがわかっていればいい。
「田中先生は? 小谷先生、田中先生との方が付き合い長いんだよね?」
松野は爪をいじりながら答える。
「田中先生、見るからに小谷先生とは合わないと思いません?」
「……確かに」
チャキチャキしていて、いつも元気な小谷先生。
表裏がなく、素直で、いい人だ。
見るからに裏の顔がありそうな田中先生とは真反対。
「小谷先生と市川先生、話してるとこをよく見るので、仲がいいんだと思います」
「そっか」
小谷先生、相談しやすいしわかる気がする。
頼りたくなる先輩だ。
「二人で歩いてるとこ、見たっていう人もいるし」
「え、うそ、なにそれ」
それは聞き捨てならない。
二人で歩いてるって、どういう雰囲気だったんだろう。
場合によっては浮気じゃん。
ショックを受ける私。
松野がニヤリと笑む。
「気になるんですか?」
余裕のないところを見られて恥ずかしい。
でも、自分の彼氏が知らないところで他の女と二人で歩いていたと聞いて、笑ってはいられない。
「そりゃあ多少は気になるよ」



