「なるほどね」
あのふたりが松野を避けている理由はわかった。
昨日の二人の会話の内容も納得ができる。
女同士はこじれると面倒だし、長い。
「部屋にいても、ご飯の時も、お風呂の時も。みんなが友達と楽しくやっている中で、ひとりって辛いです。周りの子たちも気づいてるし、気を使われるし」
「そうだね」
「歩み寄るきっかけも掴めないし、私からは許したくないし」
ふんーっと鼻でため息をつく松野。
小屋の中に重く響いて嵐の音に飲み込まれる。
彼氏、友達、自分。
彼氏に振られたくない。
せっかく想いが叶ったのに嫌われたくない。
友達とは楽しく過ごしたい。
なんでも相談したいし、話してほしい。
だけど、期待した通りにいかないことが多くて、傷ついて、傷つけて、苦しくなる。
人間関係を上手に築き上げるためには、自分だけじゃなく、みんなが強く優しくなければならない。
うまくいかないときにこそ、優しくしなければ。
一時的な不満を飲み込んで、プライドも捨てて、自分の傷や痛みには気づかないふりをして、笑って見せなければ。
彼女たちには、それがまだできなかった。
負の感情をコントロールするには、ある程度の修行が必要なのだ。
彼女たちにとって、それはきっと今。
私だって上手にコントロールできるわけではないけれど、せめて彼女たちの手本になれるように頑張ろう。



