「先生、彼氏いるんですよね」
彼氏。
そのキーワードに、飯島の顔が浮かぶ。
脱走の原因はあいつなのだろうか。
「……いるけど、どうしたの急に」
松野はふと目を閉じ、小さく息を吐いた。
そしてゆっくり目を開けて、唇を噛む。
「何か言いにくいことがあった?」
私が問いかけると、図星をつかれたように目をこちらに向けた。
そして体を起こし、小さな声で尋ねる。
「彼氏とエッチしますか?」
「エッ……チって」
唐突に投げかけられたディープな質問。
ビックリしたけれど、私だってこの年頃の女子がその手のことで多いに悩むことは理解している。
ここは真面目に答えるべきシチュエーションだ。
「まぁ……そりゃあ、宗教的に禁止されてるわけでもないからね。そういうことも、する時はするよ」
普段はヘラヘラして頼りなく見える俊輔の、ベッドで見せる色気に満ちた顔を思い出して、心だけでなく全身に照れが走る。
ちょっとカッコつけた言い方をしてしまった。
お互いに独り暮らしで、時間さえ合えばどちらかの部屋でそういうことばかりしているとは、さすがに言えない。
松野は膝に顔を埋めた。
「ですよね。付き合うって、そういうことも含みますよね」
松野と飯島はまだ高校生だ。
体を交えることにはリスクもあるし、ある程度の設備も必要になる。
「そういうことをするカップルもそうでないカップルもいるんじゃないかな」



