時間を認識した途端、急に空腹を感じ始めた。
そういえば今日は何も食べていない。
それは松野も同じであるはず。
水道があるため飲み水には困らないが、食料なんて持ってきてない。
助けが来るまで、空腹で過ごすしかない。
ぼんやり考えていると、松野が不意に声をかけてきた。
「先生、お腹空きません?」
やはり、松野も空腹を感じているようだ。
私は今にも無様な音が鳴りそうな腹部を両腕で押さえながら答える。
「空きましたとも」
すると松野がすくっと立ち上がり、自分の荷物を置いている場所へと移動し、座ってガサゴソ荷物を漁りはじめた。
「あった」
「え、なにが?」
彼女が取り出したのは、お菓子類だった。
彼女が持つスナック菓子のパッケージが、採光量の少なさにも関わらず、輝いているように見える。
「夜食にしようと思って買っておいたものの残りです。食べましょう」
「わあぁ! ありがとう!」
貴重な食料。とてもありがたい。
ポテトチップにチョコ菓子、クッキー、クラッカー。
しょっぱいものと甘いもののバランスも最高だ。
合宿も後半なのにおやつがこんなに残っているなんて……。
いや、本来ならきっと、ケンカ中の二人と三人で仲よく食べるつもりだったのだろう。
私たちは手を洗い、無垢材の床にお菓子を広げた。
そしてこの環境で食料にありつけた感謝を込めて「いただきます」をして、ありがたくいただいた。



