俊輔によると、一本道付近の木が折れて、道を塞ぐように倒れてしまっているらしい。
幹ではなく葉の広がっている部分で塞がっているため、乗り越えるのは無理だったようだ。
自分たちではどうしようもないと消防署に連絡をしたところ、
『この天気での作業は危険です。人の安全が確保できているのであれば、台風がおさまるまで待ってください』
と言われたらしい。
当然の判断だ。
ここには雨風がしのげる建物があるし、水も出るしトイレもある。
食料はないが、消防署に助けてもらわねばならない環境としては、かなり快適な方だと思う。
『ごめんな、彩子。俺が雨風が弱まるまで待てとか言ったから……』
「俊輔のせいじゃないよ。台風の中、大きな荷物を抱えた松野を歩かせられないでしょ」
『うん。ああもうほんと俺って無力だわ』
「大袈裟。でも、ありがとね。救助に来てくれるまで、待ってる」
電話を切った。
松野が不安げな顔で私を見ている。
「何かあったみたいですね」
「うん。一本道が塞がったって」
「えっ!」
「木が倒れたんだって。救助が来るまで、ここでゴロゴロ過ごしてろってさ」
「そうですか……」
さて、これからどうしたものか。
携帯で時間を確認すると、ちょうどお昼を回った頃だった。



