ヴー ヴー ヴー
携帯のバイブレーションの不快な音が部屋に響き、私は目を覚ました。
どれくらい眠っていたのだろう。
さっきより外が明るい。
着信元は俊輔だ。
「もしもし」
『もしもし彩子? 大変なことになった』
「え? 大変なことって?」
ピカッと稲妻が走る。
天気はまだ安定していないようだ。
稲妻の光に目を奪われながら俊輔の話を聞く。
バイブ音と私の声で目を覚ましたのか、松野が眠そうな顔でこちらを見た。
『一本道が塞がった』
俊輔の言葉に、私は凍りついた。
「え? なにそれ、本当?」
『こんなときに嘘ついてどうすんだよ』
「っていうか俊輔、今外だよね?」
声と一緒にゴーゴー風の音がして聞き取りにくい。
風はさっきよりずいぶん弱まったように見えるが、まだまだ雨が横殴りになる程度には吹いている。
『ああ、今宿舎に戻ってるとこ』
「こっちに来ようとしてたの?」
『当たり前だろ! 彩子が心配で』
「松野の心配もしなさいよ」
『もちろん松野も心配だよ。でも、彩子は俺が守りたいから、俺の手の届かないとこにいられると嫌だ』
俊輔の真剣な言葉に、胸がキュンと締め付けられ、泣きそうになる。
「もう、大丈夫だってば」
少し鼻声になっていることが、彼と横で聞き耳をたてている松野にバレていませんように。



